刑事裁判の流れ-起訴されてから判決が出るまで
起訴がされると、刑事裁判が始まります。
起訴がされた後、刑事裁判はどのような流れで進んでいくのでしょうか。
ここでは、第1審の刑事裁判の流れについて解説します。
なお、いわゆる否認事件と呼ばれる、事件の事実関係について争いがあるような事件の場合、やや手続きが複雑となるため、ここでは、起訴された事件の内容について被告人側も認めており、刑の重さだけが問題となるような、事実関係に争いのない事件を前提にします。
1 第1回目の裁判日程の決定
裁判所は、起訴がされた後、第1回目の裁判をいつ行うのかを決めます。
事件の内容などによっても異なりますが、起訴されてから1か月から2か月の間くらいに第1回目の裁判を行うことが多いです。
日程を決めるに当たっては、裁判所の書記官が事前に担当検察官と弁護人の予定を確認し、それぞれの予定が合うところで第1回目の裁判の日程を調整し、最終的に裁判官が日程を決定します。
2 第1回目の裁判で行われること
⑴ 冒頭手続
法廷で裁判が始まってから最初に行う手続のことを「冒頭手続」と呼びます。
冒頭手続では、順次、以下のようなことを行います。
- ①人定質問
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裁判官が入廷してきて、裁判が開始されると、被告人は、裁判官から法廷の中央にある証言台の前に立つように言われます。
被告人が証言台の前に立つと、裁判官が、氏名、生年月日、住所、本籍、職業を被告人に聞き、被告人が別人でないかどうかの確認をします。
これを「人定質問」といいます。
- ②起訴状朗読
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人定質問が終わった後、検察官が起訴状を朗読します。
- ③黙秘権告知
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検察官が起訴状を朗読した後、裁判官から、黙秘権に関する説明をされます。
「ずっと黙っていることも、一部だけ黙っていることもできます」「法廷で話した内容は有利不利を問わず証拠になります」などと説明される場合が多いです。
- ④被告事件に対する陳述
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黙秘権の説明がされた後、被告事件に対する陳述が行われます。
裁判官から、「先ほど検察官が読んだ起訴状の内容について、どこか間違っているところはありますか」などと聞かれます。
争いのない事件の場合、被告人は、「間違いありません」などと答えることが多いです。
被告人が答えた後、今度は、弁護人が裁判官から、「弁護人の意見はいかがですか」などと聞かれます。
争いのない事件の場合、弁護人は「被告人と同意見です」や「公訴事実は争いません」などと答えることが多いです。
⑵ 証拠調べ手続
冒頭手続が終了すると、法廷で証拠を調べる手続に入ります。
この手続のことを「証拠調べ手続」と言います。
- ①検察官の冒頭陳述
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検察官は、証拠調べ手続に入ると、「冒頭陳述」といって、検察官が証拠で証明しようと考えている事実関係を述べます。
冒頭陳述では、被告人の出生地や前科のほか、事件の経緯や内容が物語式に述べられる場合が多いです。
- ②検察官の証拠請求
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冒頭陳述に続いて、検察官が法廷で取り調べてほしいと考えている証拠を裁判官に伝えます。
これを「証拠請求」と言います。
- ③証拠請求に対する弁護人の意見
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検察官が証拠請求をした証拠に対して、法廷で取調べをしてよいかどうかなどについて弁護人が意見を述べます。
取調べをしてもよければ「同意」又は「異議なし」という意見を述べ、取調べをしてはいけないと考えた場合は「不同意」又は「異議あり」と意見を述べます。
争いのない事件で弁護人が「不同意」又は「異議あり」と述べることはあまり多くはありません。
- ④証拠の採否決定
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弁護人が「同意」又は「異議なし」という意見を述べた証拠については、その場で裁判官が証拠として採用し、法廷で取調べがされることが決まります。
証拠の取調べをすることを決めることを「採用決定」といいます。
- ⑤採用決定があった証拠の証拠調べ
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採用決定があった証拠のうち、調書や被害届のような書類については、検察官が一部をかいつまんで読み上げてその内容を説明します。
凶器のような書類ではない証拠物については、検察官が裁判官に見えるようにした後に被告人にも見せて確認させます。
それらが法廷での証拠の取調べです。
取調べが済んだ証拠は、その場で検察官が裁判官に提出します。
- ⑥弁護側証拠請求等
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検察官の証拠の取調べが終わった後、弁護人の方で何か証拠を準備している場合は弁護人が証拠請求をします。
争いのない事件の場合は、示談書、被害者に対する謝罪文、被告人の反省文、家族等の証人尋問が弁護人から請求される場合が多いです。
証拠請求がされた後の流れは検察官が証拠請求をした場合と同じで、検察官が「同意」又は「異議なし」という意見を述べた証拠については、その場で裁判官が証拠として採用し、法廷で取調べをすることになります。
家族等の証人が採用された場合は、その証人に宣誓をしてもらった後、弁護人→検察官→裁判官の順に質問をします。
- ⑦被告人質問
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証拠調べ手続の最後に被告人本人への質問が行われます。
被告人本人に対して法廷で質問することを「被告人質問」といいます。
被告人質問の手順は証人尋問と同じで、弁護人→検察官→裁判官の順で質問をします。
⑶ 論告・求刑、最終弁論
被告人質問が終わった後、検察官が事件に関する意見を述べ、例えば、「懲役〇年に処するのが相当」などと述べます。
これを「論告・求刑」といいます。
その後、弁護人も事件に関する意見を述べます。
これを「最終弁論」といいます。
弁護人は、争いのない事件の最終弁論では、執行猶予付きの判決などの寛大な刑にすることを求める意見を述べることが多いです。
⑷ 最終陳述
弁護人が最終弁論を述べた後、裁判官から「被告人は最後に何か言っておきたいことはありますか」などと聞かれ、被告人が事件に関して何か述べておきたいことがあれば述べることができます。
これを「最終陳述」といいます。
最終陳述では、被害者に対する謝罪の言葉や反省の言葉などが述べられることが多いです。
⑸ 判決期日の調整
最終陳述が終わった後、次回の裁判の日程を決めます。
争いのない事件で、追加で起訴される予定もない場合は、第2回目で判決が言い渡されます。
判決の言渡しをいつにするのかを裁判官、検察官、弁護人がその場で調整して決めます。
3 第2回目の裁判(判決言渡し)で行われること
第2回目の裁判でも、最初に被告人が本人であることについて簡単に裁判官から確認されます。
そして、本人であることの確認がなされた後、判決が言い渡されます。
多くの場合、どのような刑になったのかということだけでなく、その刑にした理由もその場で裁判官が述べます。
判決言渡しの際に、被告人が再び罪を犯すことがないように、裁判官が被告人を諭すこともあります。
裁判官は、判決の言渡しの最後に、有罪の判決であるので、被告人が2週間以内に控訴状を提出することで控訴をすることができることなどを説明します。
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